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吉越 章隆; 寺岡 有殿
Surface Science, 532-535, p.690 - 697, 2003/06
被引用回数:22 パーセンタイル:69.44(Chemistry, Physical)ナノ・メーターレベルでの薄膜の形成や加工技術、いわゆるナノテクノロジーを開拓するためには、原子・分子レベルで化学反応を解析しその知見を基に化学反応の制御に関する方法を見いだすことが不可欠である。近年の超LSIのゲート酸化膜厚の減少は、このようなナノ・メーターレベルの微細加工技術がなければ開発が不可能な状況である。そのためSi(001)表面の初期酸化過程に関する研究は、実験及び理論の両面から世界中で精力的に研究されている。このように極めて重要な反応系であるSi(001)表面の酸化過程のうち、最も基本的な清浄Si(001)-21表面への酸素分子の初期吸着反応を超音速分子線技術と高分解能放射光光電子分光法を用いて、ダイナミクスの観点から研究したので国際会議(nano-7/ecoss-21)にて発表する。すべての実験は、SPring-8の原研専用軟X線ビームラインBL23SUに設置した表面反応分析装置(SUREAC2000)で行った。超音速分子線技術を用いることにより酸素分子の並進運動エネルギーを、最大3.0eVまで変化させることが可能である。室温でSi(001)-21表面に並進運動エネルギーに依存して形成される酸化状態をSi-光電子スペクトルの内殻準位シフト(ケミカルシフト)から明らかにした。まず、並進運動エネルギーが0.6eVと3.0eVで比べると、飽和酸化膜厚が、それぞれ0.38nm及び0.26nmという極めて薄い酸化膜が室温で形成できることが明らかとなった。特に注目する点は、3.0eVの並進運動エネルギーの場合、膜中のSi状態が多くなる、つまり膜のSiO化が進むことである。このように、並進運動エネルギーを制御することによりサブ・ナノメーターの酸化膜が形成及び制御できることが明らかとなった。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
Surface and Interface Analysis, 34(1), p.432 - 436, 2002/08
被引用回数:3 パーセンタイル:8.65(Chemistry, Physical)超音速0分子線と高分解能放射光光電子分光法を組み合わせることにより、Si(001)初期酸化反応の実時“その場"観察を行うことに成功したので報告する。これまで、われわれはSPrin-8原研専用軟X線ビームライン(BL23SU)に表面化学の実験ステーションを設置し、Si電子デバイス作製で極めて重要なSi(001)初期酸化反応に着目し研究を開始した。Si-2p光電子スペクトルの内殻準位シフト(ケミカルシフト)を用いて、分子線照射時間にともなう酸化状態の変化を分子線照射下で観察することに成功した。特に、並進運動エネルギーが3.0eVの場合、Siに加えてSiの成分が分子線照射時間とともに増加することを見いだした。このように、高分解能放射光光電子分光法を用いることにより酸素の並進運動エネルギーによって引き起こされる酸化状態の時間変化を明らかにすることができた。さらに、Si-2s、Valence bandスペクトルをSi-2p光電子スペクトルと比較することにより酸化状態の並進運動エネルギー依存性を明らかにした。会議ではこれらの知見をもとにSi(001)表面初期酸化におよぼす並進運動エネルギーの役割とその反応メカニズムを詳細に議論する。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
Applied Surface Science, 190(1-4), p.75 - 79, 2002/05
被引用回数:12 パーセンタイル:53.21(Chemistry, Physical)Si表面の酸化を原子レベルで精密に制御することは、MOSFETのゲート酸化膜の製作にとって重要である。本研究では超音速分子線と放射光光電子分光を用いてO分子の並進運動エネルギーがSi(001)表面の初期酸化に与える影響を研究している。これまでに第一原理分子動力学計算で予測されていたO分子がSi(001)面上で解離吸着するときのエネルギー障壁を実験的に初めて検証した。1.0eVと2.6eVを境にしてSiの化学結合状態がO分子の並進運動エネルギーに依存して変化することが高分解能光電子分光で確かめられた。さらにO-1sの光電子ピークが2つの成分から構成され、その成分強度比がO分子の並進運動エネルギーに依存して変化することが新たに見いだされた。この事実はO原子の電子状態がその吸着サイトによって異なることを意味している。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
表面科学, 22(8), p.530 - 536, 2001/08
Si(001)面のパッシブ酸化に与えるO分子の並進運動エネルギーの影響を光電子分光法を用いて研究した。加熱ノズルを使用した超音波シードビーム法を用いて、O分子の並進運動エネルギーを最大3eVまで制御した。第一原理計算の結果に対応するふたつの並進運動エネルギー閾値(1.0eV,2.6eV)が見いだされた。代表的な並進運動エネルギーで測定されたSi-2p光電子スペクトルはO分子の直接的な解離吸着がダイマーとサブサーフェイスのバックボンドで起こることを示唆している。さらに、O原子の化学結合の違いもO-1s光電子スペクトル上で低結合エネルギー成分と高結合エネルギー成分として見いだされた。特に低結合エネルギー成分が並進運動エネルギーの増加とともに増加することが確認された。これもバックボンドの並進運動エネルギー誘起酸化を示唆している。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
Surface Science, 482-485(Part.1), p.189 - 195, 2001/06
シリコン表面上への酸素吸着メカニズムに関する研究は、表面基礎科学としての興味ばかりでなく、半導体デバイス作製技術として多く行われてきた。理論計算の示すところでは、化学吸着過程におけるポテンシャルエネルギー障壁は、1.0eVe以上と言われている。しかし、分子線を用いたこのエネルギー領域におけるSi(001)表面上の酸素化学吸着のダイナミクスの研究は、ほとんど行われていない。並進運動エネルギーが3.0eV以下の領域で、酸素吸着に関するエネルギー障壁を実験的に明らかにした。すべての実験は、SPring-8に設置された表面反応分析装置で行われた。並進運動エネルギーが、1.0eVと2.6eVに化学吸着の閾値が見いだされた。この閾値前後の並進運動エネルギーで酸化された表面を放射光光電子分光で調べたところ、それぞれ異なる化学吸着状態をとることを明らかにした。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 26(2), p.755 - 758, 2001/06
SPring-8の原研専用軟X線ビームライン(BL23SU)において開始した表面反応ダイナミクスの放射光による「その場」観察に関して、第12回日本MRS学術シンポジウムにおいて発表を行う。SPring-8に建設した表面反応分析装置の特徴の一つは、並進運動エネルギーを制御した分子線照射下での表面反応を、SPring-8軟X線を利用した高分解能放射光光電子分光法を用いて「その場」観察できることである。Si(001)表面の初期酸化過程における酸素分子の並進運動エネルギーの役割を、Si-2p放射光光電子分光法による「その場」観察により調べたので、本会議において報告する。最近、第一原理計算により予想された反応のエネルギー障壁を実験的に明らかにするとともに、並進運動エネルギーと酸化状態との関係を詳しく調べた。放射光光電子分光法による表面反応の「その場」観察により、酸化反応における並進運動エネルギーの役割を明らかにできた。本研究で得られた知見は、近年の電子デバイス作製技術で要求される原子・分子レベルでの表面反応制御技術の基礎として役立つものと考えられる。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
真空, 44(3), p.195 - 198, 2001/03
これまでわれわれは、SPring-8の原研専用軟X線ビームラインBL23SUに表面化学反応分析用実験ステーションを建設し、酸素分子の並進運動エネルギーによってSi(001)表面の酸化が促進されることを見いだした。また、第一原理計算で予測される酸素分子の解離吸着反応のポテンシャルエネルギー障壁を実験的に検証することに成功した。今回、SPring-8の原研専用軟X線ビームラインBL23SUを利用した「その場観察」放射光光電子分光により、並進運動エネルギーに依存した表面酸化状態(SiO: x=1-4)を、Si2pの内殻準位シフトから明らかにしたので報告する。
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 佐野 睦*
JAERI-Tech 2000-080, 33 Pages, 2001/02
SPring-8の原研軟X線ビームラインの実験ステーションとして表面反応分析装置を設計・製作した。本装置では固体表面と気体分子の表面反応における並進運動エネルギーの影響を研究することを目的とし、超音速分子線発生装置、電子エネルギー分析器、質量分析器を設置して、おもに放射光を用いた光電子分光実験と分子線散乱実験を可能とした。本装置を用いてO分子によるSi(001)表面の初期酸化の分析を行った。理論的に予測されていたO分子が解離吸着するときのエネルギー閾値が実験的に検証された。さらにSi-2pの光電子ピークの構造から並進運動エネルギーに依存して酸化数の大きなSi原子が形成されることが明らかとなった。分子線散乱の実験においても並進運動エネルギーが2eV以上のとき表面温度が700以上でSiO分子の生成速度が急激に増大する現象が発見された。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
極薄シリコン酸化膜の形成・評価・信頼性第6回研究会報文集, p.259 - 264, 2001/00
Si(001)表面の初期酸化過程をO分子の並進運動エネルギーを利用して原子線レベルで制御し、また、軟X線放射光を用いてその場光電子分光法により表面分析することを試みた。本研究では超音速O分子線を用いてO分子を最大3eVまで加速できるために第一原理計算で理論的に予測されている解離吸着のエネルギー障壁を実験的に検証可能である。その結果理論値(0.8eV,2.4eV)にほぼ等しい並進運動エネルギー閾値(1.0eV,2.6eV)を実測した。この結果は並進運動エネルギーを選択することによって常温においてダイマーのバックボンドまで、さらには、サブサーフェイスのバックボンドまで直接解離吸着過程によって段階的にSi(001)表面を酸化できることを示している。さらに、放射光を用いてSi-2p光電子スペクトルを測定し、Si酸化数が並進運動エネルギーに依存することを見いだした。
吉越 章隆; 佐野 睦; 寺岡 有殿
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1, 39(12B), p.7026 - 7030, 2000/12
被引用回数:9 パーセンタイル:41.38(Physics, Applied)超音速O分子線を用いて、O分子の並進運動エネルギーを変化させ、それによって誘起されるSi(001)表面酸化過程をXPS及び散乱分子線測定により明らかにしたので発表する。SiOの脱離を伴う酸化(Active oxidation)では、O分子の運動エネルギーが、3.0eV及び2.0eVの場合、基板温度700において、SiOの脱離及びO分子の散乱割合に大きな変化が見られた。しかし、並進運動エネルギーが、0.5及び1.0eVではこれらの現象がみられないことから、O分子の並進運動エネルギーがActive oxidationを増強する効果があることを見いだした。SiOの脱離を伴わない酸化(Passive oxidation)においても並進運動エネルギーの効果が見いだされた。酸化が、1.0eV及び2.6eVの並進運動エネルギーで増加した。これらは、Si表面の第1層のback bond及び第2-第3層間の酸化に対応することが、理論計算のこれまでの報告との比較よりわかった。
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 佐野 睦
表面科学, 21(7), p.54 - 57, 2000/07
SPring-8の原研軟X線ビームラインに設置予定の表面反応分析装置の立ち上げ実験の一環として、シリコンの表面酸化反応の研究を始めた。表面反応分析装置の諸機能のうち、超音速分子線と質量分析器を用いて、シリコン表面で散乱する酸素分子を検出することで反応確率を見積もった。高温ノズルを用いたことで従来の研究より大きな並進運動エネルギー(最大約3eV)での実験が可能になった。自然酸化膜でおおわれたSi(100)表面からの室温での散乱は反応確率ゼロの散乱とみなせる。その散乱強度に対する各温度での清浄表面からの散乱強度の比が反応確率となる。並進運動エネルギーが2.9eVの場合の反応確率の表面温度依存性に、異常なふるまいが見いだされた。化学吸着から生成物であるSiOの脱離に反応スキームが変わる温度で反応確率の大きな変化がはじめて観測された。
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 佐野 睦*
Atomic Collision Research in Japan, No. 26, p.114 - 116, 2000/00
原研軟X線ビームラインBL23SUに設置した表面反応分析装置を用いてSi(001)表面のO分子による酸化の初期過程を研究している。特にO分子の並進運動エネルギーがSi表面の酸化状態に与える影響を調べるために、O分子の場合に3eVまでの運動エネルギーを与えることができる超音速分子線技術を用いて実験を行った。その結果、Si(001)表面に解離吸着するO分子の飽和吸着量が運動エネルギーに依存して増加すること、2つのしきい値が存在することを見いだした。また、表面温度が高い場合にはSiO分子が熱脱離するが、その脱離速度にもO分子の運動エネルギーが効果的であることを見いだした。これらの結果をまとめて年報として報告する。